快適さや仕事の効率は、どこにどんな機能を果たす空間が設けられているかで違ってきます。例えば、出入り口の近くに作業スペースがあると落ち着きがなく、応接室が奥にあると作業スペースを横切らなければならないなど、人の動線を考えていないレイアウトは効率的ではありません。
新規オフィスの立ち上げやリニューアルでは、こうしたことを踏まえて機能的なゾーニングをする必要があります。また、会社の個性を打ち出せるのもゾーニングです。最近のトレンドなども取り入れて、効率的ながら気持ちよく働けるオフィスをつくりましょう。
ゾーニングとは何か、なぜ必要なのか
ゾーニングというのは、ゾーン(空間)を機能や用途によって場所を決めて配置することです。オフィスの一般的なゾーニングは、オフィスの出入り口の前か内側のドア付近に受付があり、続いて応接室やミーティングルーム、その奥に作業スペースを配置するのが主流です。
さらに、作業スペースの隣は、会議室だったり、休憩室や化粧室だったりするでしょう。オフィスなどそんなものだと思われるかもしれません。しかしながら、一般的な概念にとらわれると失敗してしまう可能性があります。
トイレなどの水まわりの配置は変更できませんが、応接室やミーティングルーム、会議室などのパブリックスペースを、作業スペースに対してどのような位置にするかは、会社によって違ってきます。
来客の多い会社では、応接室を出入り口付近に置いた方がいいでしょう。外部スタッフとの打ち合わせが多いようなら、応接室というよりミーティングルームをいくつか設けたほうがいいかもしれません。来客がそんなに多くないのであれば、応接室は考えず、ミーティングルームを作業スペースの近くに置いて社員同士の打ち合わせ用にしてもいいでしょう。
ゾーニングを行う際に大切なのは考えていく順序
オフィスのゾーニングをどうしたらいいかを考える際に、必要なプロセスがあります。
まず、どのようなオフィスにするか具体的なイメージを作り上げます。社長の独断で個性的なオフィスをつくり上げるのもいいのですが、ここは各部署の社員にヒアリングするなど、社員目線も大切です。
社長の意志、社員の希望をまとめてオフィスの方向性が決まったら、どんなスペースが必要なのかを洗い出ししましょう。自分の居場所だけ決めてあとは適当に、というわけにはいきません。オフィスにはさまざまな用途のスペースが必要です。
必要スペースを洗い出したら、それらをどこに配置するかを考えます。先にも述べたように、出入り口からの人の動線を考えたり、部署間の関係性を考えたりして、最適なゾーニングをしていきます。
位置関係が決まったら各スペースの広さを決めながら、図面上で実際にレイアウトをしてみます。キャビネットや会議テーブル、複写機などの大物のオフィス用品を配しながら、各スペースの位置や広さを調整しましょう。
作業スペースのレイアウトがゾーニングのポイント
社員の仕事場である作業スペースのレイアウトには、部署やチームごとに6〜8個のデスクを向かい合わせにまとめて置く「島型」、デスクを全て同じ向きに配置する「スクール型」、パネルなどで囲って一人ひとり独立させた「ブース型」があります。
島型にすると部署やチームがまとまり一体感が生まれるので、フロアをパーテーションなどで仕切らなくても部署・チームのゾーンが成り立つ上、ミーティングルームなどを設ける必要もなくなります。
スクール型やブース型は、個々が自分の仕事に集中できるレイアウトですが、他の社員とコミュニケーションを取るときのミーティングスペースが必要になります。また、ブース型を多く配置する場合は、ひとりのスペースが広めなので、作業スペース全体に広さが求められます。
オフィスデザインのトレンドに見るゾーニングの多様化
日本のオフィスといえば、小さな事務所から大会社まで、部署ごとをまとめた島型のレイアウトが一般的です。何かあれば座ったままで声をかけ合ってコミュニケーションが取れる利便さがあります。
外資系の会社などは、個人に仕事を任せている意識が強いので、ブース型が多く、ミーティングルームや休憩室などのパブリックスペースが充実しています。
近年は、社員一人ひとりに携帯とノート型パソコンを支給して、移動先でも仕事ができるようにする会社が増えています。取引先、ミーティングルームなどへ頻繁に出かけて仕事をするので、社員個別のデスクを廃止して、フリースペースを設けるところも出てきました。
さらに、自宅に居ながら仕事をするテレワークなど、オフィスのあり方が大きく変わってきています。これまでは、社員を効率的に管理するためのレイアウトやゾーニングでしたが、業務のIT化に伴い、社員の働き方にも変化が生まれています。そういった時流に合わせて、オフィスの環境を整えることが大切です。
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