災害時の対策
災害時にできる対策とは
地震による災害は、どこで起きるか、自分がどこにいるかで大きく対策が異なってきます。さらに、発生した時間帯によっても、危険はそれぞれ変わります。
地震の揺れがおさまった後も、自宅内やオフィスに留まるか、外へ避難するか、その判断も重要です。
むやみに外へ避難するとかえって危険や不便が増す可能性もあるので、状況に合わせた適切な判断が求められます。
すぐに避難しなければならないケース
津波など普段起こらない緊急事態の際に逃げ遅れが発生することが多くあります。
人間の脳には心の平安を守るための防御作用が備わっています。
そのため緊急事態が起こっているのに、「自分は大丈夫」「他のみんなも逃げてないから大丈夫」と思ってしまうのです。これは「正常性バイアス」と「同調性バイアス」という心理が作用しています。
災害時には、この心理が避難行動を遅らせる原因となります。
正常性バイアスの誤認を防ぐためには、自ら率先して避難行動に移し、周りの人にも呼びかける行動をとることが必要です。
すぐに避難しなければならないケース
津波や土砂災害が予想されるとき
火災やガス漏れが発生したとき
近隣で大火災が発生したとき
家やビルが倒壊したり傾いたりしたとき
自治体などから避難勧告・避難指示があったとき
安全のために避難するケース
自宅が無事で在宅避難を行なおうと思っていても、安全のために避難が必要なケースもあります。
避難が必要と思った場合は、まずは避難所へと行ってください。
安全のために避難するケース
・日常生活のためのライフラインが途絶えたとき
・玄関からの出入りが困難になったとき
・住戸内に安全な場所がないとき
・居住者のほとんどが避難して防犯面の不安を感じたとき
・余震で自宅内にいることが不安に感じたとき
地震が発生した時、
いる場所によって対応も変わる
地震による災害は、どこで起きるか、自分がどこにいるかで大きく対策が異なってきます。さらに、発生した時間帯によっても、危険はそれぞれ変わります。
地震の揺れがおさまった後も、自宅内やオフィスに留まるか、外へ避難するか、その判断も重要です。
むやみに外へ避難すると、かえって危険や不便が増す可能性もあるので状況に合わせた適切な判断が求められます。
オフィスの中
高層階:概ね10F以上
大地震が起きれば、高層ビルほど揺れは長く続きます。
高層階では、ほとんど身動きができないほどの激しい揺れに襲われる可能性があります。揺れの振幅が大きく、体が窓の外に放り出されることも考えられますので、できるだけ窓から離れ、固定された頑丈なものにしっかりとつかまってください。
オフィス家具類が転倒落下することに加え、コピー機や自動販売機のような重量物が大きく移動します。
また、高層ビルの窓ガラスは強化ガラスなので、揺れても割れないように作られていますが、ビル内にあるものが動いてぶつかった場合は割れる可能性があります。ガラスから離れ、建物の中心部寄りに避難しましょう。
机やテーブルがあればその下に潜り込み、揺れが収まるのを待ちましょう
火気や窓、背の高い棚や備品、機械装置のそばには近づかないようにしましょう
「緊急地震速報」→ただちに作業・操作の手を止め、安全な姿勢をとりましょう
揺れが次第に強くなる→頭を守り、外へ避難(落下・転倒物に注意)してください
※慌てて非常口などに駆け出すと危険です
中・低層階
オフィス家具類の転倒落下に注意してください。パソコンなどのOA機器も揺れで落下する可能性があります。
机やテーブルがあればその下に潜り込み、揺れが収まるのを待ちましょう
火気や窓、背の高い棚や備品、機械装置のそばには近づかない
「緊急地震速報」→ただちに作業・操作の手を止め、安全な姿勢をとる
揺れが次第に強くなる→頭を守り、外へ避難(落下・転倒物に注意)
スーパーやデパートなどの商業施設の中
スタッフの案内に従って行動してください
案内がない場合でも、慌てて非常口などに駆け出すと危険です
頭を守るなどして、つり下がっている電気や掲示物のそばから離れましょう
路上
ブロック塀や自動販売機、看板などの落下する危険性があるものから離れましょう
頭を守るためにカバンなどを頭上にかざしてください
速やかに広いスペースに避難。建物、電柱等には近寄らないようにしましょう
車を運転している時
車を道路の左側に寄せて停車し、ラジオなどで情報を入手してください
車から避難する場合は、車検証を持ち、鍵をつけたままにしてロックはしないでください
スマートキーの場合はダッシュボードなど分かりやすい場所に置いておきましょう。
列車など公共交通機関の中
地震で緊急停止した列車は、安全が確認できるまでは運転を再開することができません。ほとんどの鉄道会社では、震度5弱以上を計測したエリアでは鉄道施設の被害状況を確認するため保守区員の歩行による設備点検を行う必要があります。
大規模な地震が発生した場合は、鉄道の運転再開に時間がかかるでしょう。
列車から降りて最寄りの駅まで徒歩で避難をすることもありますが、周辺の安全確認や応援の手配が完了してから乗務員の指示によって行われますので、自分の判断で勝手に列車の外に出てはいけません。
都市部などで、通勤ラッシュ時の満員電車の中や地下鉄の中で地震に遭遇する可能性も十分にあります。まずはパニックにならずに、落ち着いて行動しましょう。
普段から水や携帯食などを持ち歩くいておくと安心です。
エレベーターの中
発生が懸念されている首都直下地震。首都直下地震が起きた場合、首都直下地震では3万台のエレベーターが停止し、住宅やオフィスで最大約1万7千人が閉じ込められると想定されています。
エレベーターに閉じ込められた場合には、エレベーター内のインターホンや非常電話で外部と連絡を取りますが、大地震の場合、長時間にわたり救出できない場合もあります。
東日本大震災では、閉じ込めが210台(*1)発生しました。都内では少なくとも84件の閉じ込めが発生しました。救出まで最大9時間以上かかっています。(*2)
84件のエレベーター閉じ込めで9時間ですから、それよりも多い1万7千人が想定されている首都直下地震などの大規模地震では、助けがいつ来るかも分かりません。
最新のエレベーターは最寄り階で止まる仕様になっていますが、作動しない場合やシステムが故障する場合もあります。
また、古いエレベーターの場合、階と階の間に閉じ込められてしまうこともあります。
そのため、エレベーターに乗っているときに大きな揺れを感じたら、まずは全ての階のボタンを全部押し、開いた階で降りましょう。
通常、日本のエレベーターは内部から開けることはできないため、映画のように上部の脱出口から脱出することはできません。閉じ込められた場合は外部からの救助を待つしかありません。
大地震に備え、会社やマンションの住民による閉じ込め救助訓練が推進されていますし講習会なども開催されています。地域や会社の避難訓練の際には、こういった救助訓練も取り入れることが大切です。
*1 1都1道13県、大手5社が保守を行っている昇降機 (出典)東日本大震災 住宅局の対応状況(2012年6月4日10:00時点)
*2 (出典) 国土交通省「既設エレベーターの安全確保の促進【日本再生重点化措置要望】」(平成24年度概算要求資料)
自宅で
頭を守り、大きな家具から離れ、テーブルや丈夫な机などの下に隠れてください。もしくは廊下など、物を置いていない場所に避難しましょう。
火元の近くにいる場合は火を消してください。
揺れがおさまったら、痛むところはないか、出血はないかなど、まずは自身の状況を確認します。自身の無事が確認できたら、足元を確認します。
床にガラスや陶器の破片が散乱していたら、スリッパを履く、雑誌などで足場をつくるなど、移動の安全を確保してから行動を起こしましょう。
次に、家族や近所に声をかけ、安否を確認します。閉じ込められていたり、家具の下敷きになっていたりしたら、周囲と協力して救出し、ケガなどの応急手当てをします。
それから、災害の規模や被害状況などの情報を入手し、外部へ避難すべきかどうかを判断します。ただし、津波などの危険性が高い地域の場合は、直ちに避難行動を開始しましょう。
火元を確認し、火災が発生していたら、すぐに初期消火をします。また、火災が発生していなくても、電源プラグはすべてコンセントから外し、電気のブレーカーを落としましょう。
お風呂の中
お風呂に入っている時に地震が来ることもあります。湯船の中だったり、体を洗っている最中、髪を洗っている時かもしれません。子供と一緒の場合もあります。まずは、身を守ることを最優先にして、揺れがおさまってから避難しましょう。
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閉じ込め防止のため、扉を開けましょう
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タイルや割れた鏡などの破片が降って来ることがあるため、お風呂の蓋や風呂桶などで体を守りましょう
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追い焚き運転などのスイッチは切りましょう
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床などの散乱物に気をつけて出ましょう
マンションなどのしっかりした建物の場合は、倒壊の危険も少ないため、服などを着る余裕があるかもしれません。倒壊の危険がある場合は、バスタオルなどを巻いて着替えを持って、逃げましょう。その際、足はスリッパや靴を履いてください。
トイレの中
トイレのドアの前に家具や荷物を置いている場合、それが倒れてドアが開かなくなることがあります。また、ドアが歪んで開かなくなることも。トイレの前には何も置かないことが一番ですが、揺れを感じたら閉じ込め防止のためにドアを開けましょう。
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閉じ込め防止のため、扉を開ける。
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排水管や下水管が破裂している可能性があるため、確認が取れるまでは水を流さないでください。
寝ている時
就寝中は、とっさに状況を判断して行動するのは困難です。慌てて動くとかえって危険ですので、布団の中でうつ伏せになり、枕や布団で頭部と体を保護して、揺れがおさまるのを待ちましょう。揺れがおさまったら、懐中電灯や灯りを点けて周りの状況を確認し、スリッパなどを履くようにしてください。
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枕や布団で頭部や身体を保護しましょう
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メガネ・靴(スリッパ)・懐中電灯・着替えなど、非常時にすぐ必要なものや非常持ち出し袋を寝室に置きましょう。
自分が被害にあったときは
住戸内にひとりでいるときに家具の下敷きになったり、閉じ込められたりしたら、人が通る気配がしたときに声を出したり、近くのものを叩いたりして知らせましょう。
災害発生時の医療について
震災時には、多くの怪我人が出ると予測されます。
防災科学技術研究所と、災害時の拠点病院に指定されている日本医科大学の研究グループがまとめた報告によると、3人に1人は、治療を受けられないまま死亡する可能性があるということです。
東京湾北部を震源とするマグニチュード7.3の地震が起きたと仮定し、東京都内の医療体制などをもとにシミュレーションしています。
それによりますと、けがの症状が比較的重い状態で、都内の医療機関に搬送されたり、訪れたりする被災者は、2万1000人余りにのぼります。
しかし、医療スタッフの不足などによって、およそ3人に1人にあたる6500人余りが、地震発生から8日間の間に、治療を受けられないまま死亡する可能性があるということです。
地域別では全体の85%が、東京23区の東部と東北部の医療機関に集中しています。
こうした医療機関では地震発生から数時間後には医療スタッフが足りなくなり、その状況は5日間以上続くということです。
一方、搬送後に治療を受けられた被災者の96%は助かる可能性が高いという結果になりました。
少しでも怪我人を防ぐためにも、家具の転倒防止やガラスの飛散防止対策を行いましょう。